【要介護認定】審査(一次判定・二次判定)をわかりやすく解説!
介護保険制度は、数ある公的制度の中で特に複雑で難しいと言われています。
介護サービスの種類の多さもそうですが、仕組み自体が分かりづらいので、介護保険を利用するのはそこそこハードルが高いものになっています。介護保険サービスをしっかりと利用するためにも、焦らずに、今の自分に必要なことから理解を深めていくとよいでしょう。
ここからが本題
介護保険サービスを利用するためには、要介護認定に申請し、審査を受ける必要があります。審査で「要支援」または「要介護」と認定されると介護保険サービスを利用することができます。要介護認定では、介護保険サービス利用者(要介護者)となる人の心身状態が判定の基準になります。よって、要介護認定の判定に関わる内容を過不足なく伝えられるかが一番重要なポイントになります。認定を確実なものにするためにも、審査の基準となる情報を事前に知っておくことは必要な作業といえます。
この記事では、介護保険を利用するうえで避けては通れない要介護認定の「審査」についてを分かりやすく説明します。これから申請を考えている人は、読んでおいて損はない記事ですのでぜひご覧ください。
- 要介護認定の審査について知りたい
- 審査の基準を事前に確認しておきたい
- これから要介護認定の申請をしようと考えている
- 要介護認定の更新・区分変更をする予定の人
要介護認定の申請から利用までの流れを知りたい人は、こちらをご覧ください。
要介護認定の申請に必要なものや申請場所について知りたい人は、こちらの記事をご覧ください。
要介護認定には審査がある
介護保険のサービスを利用するためには要介護認定を受ける必要があります。
認定は一次判定と二次判定の2段階で審査が行われます。
一つ注意が必要なのは、要介護認定は資格の受験を申し込むときのような、階級を希望するシステムはありません。つまり、要介護認定の審査を申し込むときに、認定ランク(要介護度)を希望することはできないということです。
審査の結果、要介護3を希望していたとしても要支援1と認定されるかもしれませんし、場合によっては非該当と判断されることもあります。逆に、要支援1くらいだと思っていても要支援2や要介護以上の認定結果が出ることもあります。
要介護認定の申請に必要なものや申請場所について知りたい人は、こちらの記事をご覧ください。
一次判定について
一次判定は、主治医の意見書と訪問調査員(介護認定調査員)の調査結果をもとにコンピュータ判定します。
この段階では、暫定的に要支援・要介護の認定ランクが決まります。暫定的である理由は、この後の二次判定が最終的な判定結果だからです。よって、一次判定で出た認定ランクは、二次判定の段階で変わる可能性があります。
主治医意見書
主治医意見書は、主治医(かかりつけ医)が申請者(要介護者)の病歴や負傷、精神状態などをまとめた書類です。その他にも、認知症の有無や筋力の状態、日常生活の自立についてなど、申請者の心身の問題や生活状況が記載されます。基本的には、市区町村が主治医に依頼をすることで作成してもらいます。
主治医意見書は、要介護の判定を左右する重要な書類です。主治医には、心身の状態だけでなく、日常生活でどのような問題を抱えているかを伝える必要があります。つまり、介護の必要性をどれだけ主治医が理解したうえで書類を作成してくれているかがポイントになります。そういった意味でも、日ごろお世話になっている先生、いわゆる『かかりつけ医』の存在は重要であると言えます。
認定調査票
認定調査票は、訪問調査員が要介護者(利用者)から聞き取りを行う際のチェックリストです。各項目について、質問や動作確認があります。身体機能や認知機能など6つに大別されており、そこからさらに細かい項目が定められています。それに加え、チェック項目に反映することが難しい具体的または特殊な介護の手間などは、特記事項という形で調査内容を記載します。
認定調査票の内容については、次の表で示す通りです。
分類 | 項目 | 項目数 |
---|---|---|
第1群 身体機能・起居動作 | 1-1 「麻痺等の有無(左上肢、右上肢、左下肢、右下肢、その他(四肢の欠損))」 1-2 「拘縮の有無(肩関節、股関節、膝関節、その他(四肢の欠損))」 1-3 「寝返り」 1-4 「起き上がり」 1-5 「座位保持」 1-6 「両足での立位保持」 1-7 「歩行」 1-8 「立ち上がり」 1-9 「片足での立位」 1-10 「洗身」 1-11 「つめ切り」 1-12 「視力」 1-13 「聴力」 | 13項目 |
第2群 生活機能 | 2-1 「移乗」 2-2 「移動」 2-3 「えん下」 2-4 「食事摂取」 2-5 「排尿」 2-6 「排便」 2-7 「口腔清潔」 2-8 「洗顔」 2-9 「整髪」 2-10 「上衣の着脱」 2-11 「ズボン等の着脱」 2-12 「外出頻度」 | 12項目 |
第3群 認知機能 | 3-1 「意思の伝達」 3-2 「毎日の日課を理解」 3-3 「生年月日や年齢を言う」 3-4 「短期記憶」 3-5 「自分の名前を言う」 3-6 「今の季節を理解する」 3-7 「場所の理解」 3-8 「徘徊」 3-9 「外出すると戻れない」 | 9項目 |
第4群 精神・行動障害 | 4-1 「物を盗られたなどと被害的になる」 4-2 「作話」 4-3 「泣いたり、笑ったりして感情が不安定になる」 4-4 「昼夜の逆転がある」 4-5 「しつこく同じ話をする」 4-6 「大声をだす」 4-7 「介護に抵抗する」 4-8 「「家に帰る」等と言い落ち着きがない」 4-9 「一人で外に出たがり目が離せない」 4-10 「いろいろなものを集めたり、無断でもってくる」 4-11 「物を壊したり、衣類を破いたりする」 4-12 「ひどい物忘れ」 4-13 「意味もなく独り言や独り笑いをする」 4-14 「自分勝手に行動する」 4-15 「話がまとまらず、会話にならない」 | 15項目 |
第5群 社会生活への適応 | 5-1 「薬の内服」 5-2 「金銭の管理」 5-3 「日常の意思決定」 5-4 「集団への不適応」 5-5 「買い物」 5-6 「簡単な調理」 | 6項目 |
その他 過去 14 日間にうけた特別な医療について | 【処置内容】 1. 「点滴の管理」 2. 「中心静脈栄養」 3. 「透析」 4. 「ストーマ(人工肛門)の処置」 5. 「酸素療法」 6. 「レスピレーター(人工呼吸器)」 7. 「気管切開の処置」 8. 「疼痛の看護」 9. 「経管栄養」 【特別な対応】 10. 「モニター測定(血圧、心拍、酸素飽和度等)」 11. 「じょくそうの処置」 12. 「カテーテル(コンドームカテーテル、留置カテーテル、ウロストーマ等)」 | 12項目 |
一次判定の結果予測を自分で調べることもできます。
気になる方は「要介護認定 一次判定 シミュレーション」で検索してみてください。あくまでもシミュレーションですので、実際の結果とは異なる可能性があります。参考程度と考えておきましょう。
一次判定の評価の仕方
判定は、介助・介護にかかる手間を複数の項目に分類し、それらを時間(要介護認定等基準時間)に換算したものと認知症に関連する要素(認知症加算 ※)を合算して評価されます。
(※ 認知症加算とは、運動能力の低下していない認知症高齢者について、一定の条件を満たせば要介護認定等基準時間にさらに時間を加算するというものです)
『一次判定の要介護度の算定イメージ』
要介護度(一次判定) = 主治医意見書 + 認定調査票(要介護認定等基準時間 + 認知症加算)
※実際にこのような計算式があるわけではありません
上述でも述べましたが、一次判定は介助・介護にかかる手間などを評価しています。
訪問調査員が、認定調査票をもとに心身の状態の聞き取り調査を行い、それと主治医意見書をあわせて一次判定の評価とします。
認定調査と主治医の意見書をもとに、一次判定が決まるということですね
二次判定について
二次判定は、専門家たちによる審査(介護認定審査会)が行われます。
審査会では、一次判定の結果や主治医の意見書、派遣調査員による調査結果(特記事項)などをもとに、保険・医療・福祉などの専門家による要介護度の判定が行われます。
この段階からは利用者(要介護者)や家族の作業はないので、あとは結果がくるまで待つだけだよ
この二次判定で最終的な認定ランク(要介護度)が決まります。
判定の注意点
「一次判定について」の項目でも説明しましたが、要介護度は介助・介護にかかる手間を時間に置き換えて判定しています。
つまり、要介護認定は介護保険サービスがどの程度必要になるのかを判断しているため、認定ランク(要介護度)と心身の状態の重さが必ずしも一致しない場合があります。
厚生労働省では、上記のような場合の具体例として次のように説明しています。
認知症の進行に伴って、周辺症状が発生することがあります。例えば、アルツハイマー型の認知症の方で、身体の状況が比較的良好であった場合、徘徊をはじめとする周辺症状のために介護に要する手間が非常に多くかかることがあります。しかし、身体的な問題が発生して寝たきりである方に認知症の症状が加わった場合、病状としては進行していますが、徘徊等の周辺症状は発生しないため、介護の総量としては大きく増えないことが考えられます。
出典:「要介護認定はどのように行われるか」(厚生労働省)
「非該当」と判定された場合
介護を必要としない状態で自立した生活が可能と判断された場合は「非該当」という判定結果になります。
「非該当」と判定された人で、実情と一致していないと思われる場合は、再審査を行うことができます。
(※再審査ですので、再度非該当と判定される場合もあります)
要支援・要介護の判定に不服がある場合
「要支援1~2」もしくは「要介護1~5」と認定された人で、その認定ランク(要介護度)が実情と一致していないと思われる場合は、有効期限の終了前であっても要介護度の変更手続き(区分変更)を行うことができます。
(※希望通りの要介護度で認定されるとは限りません)
まとめ
要介護・要支援の状態は性質上、明確に判断することが難しいです。精神的・身体的な問題や認知症の有無、生活環境によっても判断が違ってくることがあります。必ずしも一律であるとは限りませんし、むしろ人によって違ってくるのが当たり前です。
認定を受けるためには、身体状態の把握、日々の行動のチェック、日常生活で抱えている問題の確認、といったことが重要になります。客観的な目線が必要になるので、家族がしっかりとフォローしていくようにしましょう。
本人自身では気づけない問題もあるので、普段の行動を家族が把握しておくことも大事だよ
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